もっと溺愛以上
「成績がいいだけじゃなくて、何に挑戦しても、そつなくこなしてしまう桜の将来を、どう導いていけばいいのかもわからなかった。父親なのにな」
父さんが、笑いながらもため息をついた。
「桜なら、何を目指しても成功するさ。画家になりたいなら、なったらいいし。
もし稼げない『自称芸術家』になっても、有星が食わせてくれるさ。
な、そうだろ?」
にやりと口元を歪める父は、意味ありげに有星に視線を向けた。
軽い声音だけど、その視線には何かを言い聞かせているように見えた。
私の隣で食事をしていた有星は、一瞬体をびくっとさせ、思わず息を止めた。
「有星?」
そんな不自然な有星に、思わず声をかけてしまった。
それに、父さんが有星に言った言葉だって、理解できない。
「有星が、食わせるって、どういう意味?」
父さんと有星を交互に見遣りながら、聞いてみると、有星は途端に不機嫌になった。
手にしていた箸を箸置きに置くと、ちらりと父さんを睨んだ……。え?睨んだ?
「健吾さん……今、それを言う?」