飼い犬に手を噛まれまして


「わ……私を選んで欲しいです……」



 涙がポタポタと落ちた。



「私、郡司先輩が好きです! 二股なんて、いや! 先輩、私を選んで……」



 卑怯だってわかってる。私は、狡い。


 先輩の優しさに付け込んで、和香のことを蔑ろにしてる。


 だから、涙が止まらないんだ。



「もう選んでるだろ……車を降りよう。来いよ」


 先輩に手を引かれて車を降りる。そのままエレベーターに乗ると、先輩に髪を撫でられた。

 
 涙で視界が歪む。先輩の部屋に入る。


 靴を脱ぐと、後ろから抱きかかえられる。



「せんぱ……」


「ピザでもデリバリーして、ゆっくり話ながら……と思ってたけど無理だろ?

 茅野、可愛いすぎだ……」





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