飼い犬に手を噛まれまして
─────先輩は、「自制心ないよな」と言うわりに落ち着いて私を床に倒す。自制心がないのは私のほうで、全然先輩を我慢できそうにない。
触れられるのが嬉しくて、大切に扱われるのが泣きたいくらいにもどかしくて、もっともっと、と先輩に唇を寄せる。
「こんな時だけ積極的なんて、反則だ」と言って、拒絶できないほどの魅力的な笑みをみせてくる。
昨夜抱き合ったばかりなのに、私たちどうにかしている。
部屋が真っ暗になるまで先輩と散々抱きあって、それから部屋を出た。
一人だったら、どう足掻いても入り口で回れ右をしてしまいそうなフレンチレストランに行って、アルコールなしの乾杯。緊張しながらの、初ディナーデート。
お腹いっぱい胸いっぱいの私は、先輩のマンションに“お持ち帰り(って先輩が言うから)”されて「明日は、どこでデートする?」なんて甘く囁かれながら、最高級品の枕でも適わないようなスペシャルエクセレントな先輩の腕枕で眠りについた。
日曜日は、トーストと甘いカフェラテの朝食をとって海までドライブ。話題のアウトレットで買い物をして、郡司先輩のセンスの良さは、生まれもった気質なんだな……なんて一人で納得したりもした。