飼い犬に手を噛まれまして
ずっと繋いだままの手。先輩の少しゴツゴツした手の感触と熱は、私の手のひらが完璧にインプットした。
高校生のカップルみたいに、柱の影に隠れてキス。車の中でも何度も急かすようなキスをした。
郡司先輩は、その洗礼された表情を全く乱すことなく、薄茶色い瞳はジッと私を見つめてくる。
「茅野といると、楽しい」と言って、私を有頂天にさせてくれる。
先輩と過ごす三度目の夜。
「明日から仕事だから、暫くは今日みたいなデートはできないな」
彼の素肌に頬を寄せて、その心地良さにうっとりとした。
「わかってます。週末一緒に過ごせただけで、私は大満足です。それに会社で毎日会えますし」
「それもそうだな……明日は一緒に出勤しような」
「えっ? やめといた方がいいですよっ!」
「なんだよ、嫌なのか? 準備してきてあるんだろ?」
ベッドサイドに置いた私のバックを指差した。先輩が、持って来い、って言うから自分の部屋を出た時、月曜日出勤までの着替えとか諸々は用意してきた。