飼い犬に手を噛まれまして
「まさか、社内の男を片っ端から食い漁ってきたとか?
だからか……茅野って、予想以上にエロいよな……脱がして吃驚。いい体してるし」
「せ、先輩っ! そんなことしてませんっ!」
「じゃ、何か他に理由あんのかよ。うちの会社は社内恋愛フリーだし、俺は全社員に茅野と付き合ってること知られたいけどな」
先輩の吐息が首筋にあたる。それから、甘噛みされて歯が皮膚に食い込む。
「他の男が寄ってこないように……」
「誰も私になんて寄ってきません……先輩の方が女子社員の憧れの的なんですよ」
ピリッと痛みが走った首筋に、次は熱い舌が這う。癒やすようでいて、私を責めているのかもしれない。
「一緒に出勤しよう。おやすみ」
先輩は大きく息を吐き出すと、目を閉じた。
「おやすみなさい。先輩」
規則的な先輩の呼吸を聴覚と触覚から取り込め眠りにつく。それなのに、まだこれが現実だなんて実感はわいていなかった。