飼い犬に手を噛まれまして
「深陽さん、少し時間あります?」
「はい、少しなら」
首を傾げた彼女に、部屋へ入るようにすすめた。何を話していいかわからないけど、二人を繋ぎ止めてあげなきゃいけないと思った。
コーヒーをいれて、食後に食べようと買ってきた二つのプッチンプリンを平たいお皿にのせる。
「一緒に食べませんか?」と言うと、緊張した顔で居心地悪そうに座っていた彼女の表情が少し緩んだ。
ワンコがうちに転がり込んできた経緯と、深陽さんを待っていた話を、彼女は小さく頷きながら聞いていた。
「荷物がそのままだし、いつか取りにくると思うんです。だから、その時に私が坂元くんに深陽さんが来たことを伝えます。彼、きっと喜びますよ!」