飼い犬に手を噛まれまして


 履いてきたヒールのパンプスを脱ぎ捨てたい。


 どっと疲れがでて、ベンチに力なく座った。


 そうだよ。まさか、そんなうまくいくわけない。私って……本当バカみたい。

 自分で傷つけて追い出すようなことしといて、自分と行った公園にワンコがいるかもしれないなんて必死になっちゃって……



 
 人が少なくなってきた公園は少し気味が悪い。こんなとこにワンコがいるはずがないか……

 外灯を頼りに、公園の外へ出た。疲労感を引きずりながら歩く。


 お腹すいたな。



 公園前の大通りを歩くと、ワンコと食べたオムライス屋さんが見えた。昼はお洒落な洋食屋さんてイメージだったけど、夜も営業してるんだ。


 お店からは、食欲をそそるようないい香りがする。夜は照明を抑えて、落ち着いた雰囲気を出してる。


 お腹すいてるし、食べていこうかなぁ? 

 それより、早くワンコを見つけないと……でも、これ以上思いあたる伏がないのも確か。



 白い木枠に曇りガラスの扉を開くと、来客告げる鈴が鳴る。




 


 

< 136 / 488 >

この作品をシェア

pagetop