飼い犬に手を噛まれまして
「そういえば……今夜は、彼氏さんほっといて大丈夫なんですか?」
ワンコが挑発的に首を傾げた。先輩に対して罪悪感みたいなものをかんじさせる問いかけ方に聞こえた。
「忙しい人だから、」
……だから?
なんて言おうとしたんだろう?
「それなら、ゆっくりしていってくださいね」
「ちょっと待って! ワンコ、今夜は帰っておいでよ!
お店で寝泊まりしてるっていってたけど、ここじゃシャワーも布団もないでしょ?」
なんで必死にワンコを呼び戻してるんだろう私……
ワンコは、満面の笑みで「ありがとう、紅巴さん」と頷いた。心臓がズキンと痛んだ。