飼い犬に手を噛まれまして


「はい……」


 目眩がするくらいドキドキしてるのに、先輩は綺麗な顔を涼しげに微笑ますだけ……


「じゃ、体で解れ」


 透明感ある薄い唇は、あっという間に私の唇を隙間なく埋めた。

 口直しで食べたバニラアイスの味がするキス。

 冷たい舌先が絡み合って、ぴちゃりと音をたてる。



 会社の中なのに……はやく庶務室に帰らないと萌子先輩に怒られちゃうのに……



 私はそっと瞳を閉じて、先輩からのキスを受け入れる。



 先輩が好きだ。




 こんなにドキドキさせてくれる。





 先輩が大好きなんだ……。




 それなのに、キスの合間に色んなことを考えてしまう。


 先輩、私だけだよね?



 背中に腕を回して、体を預ける。


「茅野…………、これ以上やるとヤバい。我慢できなくなる」


 小さく頷く。


「今夜は、早く帰れるから一緒に帰ろうか?」



 
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