飼い犬に手を噛まれまして
────段取り通り、私と濱中さんで萌子先輩をお店に連れて行く。
そのお店には、元庶務課にいた人や萌子先輩と交流がある人たちが待っている。
「萌子先輩、結婚おめでとうございます!」
私のかけ声とともに、郡司先輩が大きな花束を萌子先輩に渡した。
スーツ姿で背後からさっと花束を出した郡司先輩は、格好良すぎて私には王子様にしか見えない。いつかそんな風に私も花束をもらいたいなぁ。
「や……なに? なに?」
びっくり顔の萌子先輩は、状況がわかると花束を受け取り私を押しのけて郡司先輩に抱きついた。
「ちょっと! 萌子先輩! この場合、後輩の私に抱きつきませんかっ?」
「うっさいわね! 郡司くんに抱きつけるチャンス逃すわけないじゃない!」
感動シーンも大爆笑に変えてしまう萌子先輩だけど、目が涙ぐんでいた。
萌子先輩パワーに失笑した郡司先輩は、やっと解放されて私の隣に座った。
「花束ありがとうございました。すごい綺麗ですね。先輩は、ジュースでいいですか?」