飼い犬に手を噛まれまして


「ああ、ジンジャエールにする」


「私はお酒飲んでもいいですか?」


「いいよ、送ってやるから」


 そのやり取りを、お誕生日席に座っていた萌子先輩が目ざとく察知した。


「ちょっと! 茅野! 郡司くん独占するな!」


 先輩の一声で他の女子も、うんうん、と大きく頷いた。今日来てくれた男性社員は、髪に疑惑を抱えた経理課長と郡司先輩だけだ。


「そんな人聞きの悪いこと言わないでくださいよ! 萌子先輩はいつもそうやって……」と誤魔化そうとすると、郡司先輩の腕が私を後ろから抱きしめた。



「俺、茅野のものですから。独占されて当然なんですよ」



 皆さん、シーン。目が点。


 ですよね?




「あはは……本人のお許しでましたけど……なーんて」









< 177 / 488 >

この作品をシェア

pagetop