飼い犬に手を噛まれまして
 
 サプライズパーティーは終電ギリギリでお開きになった。

 皆と別れて、郡司先輩と手を繋いでのんびりと歩く。


「先輩、今日は来てくれてありがとうございました。花束も素敵でしたよー」


「ああ、喜んでもらえてよかったよ。実は俺、萌子先輩には感謝してるんだ」


 歩道のブロックの上をフラフラ歩く私は、目線が先輩よりちょっと高い。


「えー? あの萌子先輩にですかぁ?」


「茅野、酔ってるだろ?」


「ぜぇーんぜん! 先輩、話の続き聞かせてください」


 先輩は、「落ちるなよ」と手をしっかりと繋ぎなおして話はじめた。


「俺、会社入ってはじめて表彰された時に萌子先輩が祝賀パーティーに来てくれて、皆は俺に『よかったな』とか『頑張ったな』とか声をかけてくれていたんだけど……萌子先輩だけは『調子にのるんじゃないわよ』て、怖い顔して言ってきたんだよ」


「うわぁー、ありえる。萌子先輩らしい」


「でも、感謝してる。俺、あの時確かに調子のってたんだ」


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