飼い犬に手を噛まれまして


「いいですよ、適当にジョキジョキ切ってくれれば……さ、行きましょう。講堂はあっちです」


 なんてことない、って顔したワンコはスタスタ歩き出した。

 適当にジョキジョキって、絶対有り得ないし!


 でも、今の髪型は顎のラインに添うようにすいてあってワンコに似合う髪型だし、流行にも逆らってない。もうちょっと短くしてワックスをつけたら、すごいカッコいい髪型だ。

 もしかすると、ワンコの髪はずっと深陽さんが切ってあげてたのかもしれない。




「あー! 星梛だ!」


 前を歩いてた女の子の一団が、ワンコを発見してキャーッと歓声をあげた。


「久しぶりだねー、最近全然会ってなかったじゃん」

「バイト、忙しいからさ」


「アルバイトしてるのー? うそー、すごーい」



 ワンコはあっという間に取り囲まれて、私はずり落ちたショルダーバッグを肩にかけ直した。




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