飼い犬に手を噛まれまして
─────広い講堂はすでに超満員。年齢層は様々でちょっと安心した。
隅っこの席を二つ見つけて、ワンコの隣に座る。
さすが人気モデルの講演会。最前列にもビッシリと人がいる。
盛大な拍手と共に山口エリナが現れると、会場は歓喜の嵐にのまれる。
「かわいー!」「ほそーい!」なんて野次が飛び交う。
さすが人気モデル……小さい顔にぷっくりとした唇。透き通るような瞳に、抜群のスタイル。
「ああ……全然負けてる……」
「ん? 紅巴さんライバル心抱いてたんすか? そりゃ、いくらなんでも無謀ですよ。あ、でも年齢は紅巴さんのほうが若いですよ。彼女、遅咲きのモデルですからね……でも、年齢感じさせないなぁ」
やっぱ芸能人は綺麗だな、と隣で頷くワンコを横目にステージ上の山口エリナの話に耳を傾ける。
モデルの講演会なんて、大学側の注目度をあげるための講演会だとばかり思っていたら、彼女はかなり知的な喋り方をする。