飼い犬に手を噛まれまして

危険なワンコ





────「紅巴さん、明日仕事じゃないんですかーっ?」


「うるさーい! あたし、飲みたい気分なのっ! ほっといてよぉ」

「わかりました。付き合います!」


 ワンコのバイト先でビールやワインを飲んで、マンションに帰ってきてからも、サワーをつくって……もう何杯飲んだか、よくわからない。


「彼氏さんが山口エリナの友達だから拗ねるなんて、紅巴さん可愛すぎますよーっ」

 ワンコにも浴びるほどのアルコールを与えてしまった。

 狭い部屋で必要以上に大音量で話す私たち。

 先輩のこと、山口エリナのこと、私は洗いざらい全てワンコにぶちまけてしまっているらしい。


「だってさー、ワンコ。もし、あんな綺麗な人が自分のことをああやって誰かに話してたら、どんな気分よ?」

「俺には、わかりませんよー! でも、彼氏さんが友だちだって言ってるんなら友だちですってば!」

「わかってるーっての!」


 わかってる。わかってるんだよ。

 先輩のこと、ちゃんと信じてる。だから、これはただの嫉妬なんだって。でも、それだけじゃ割り切れないこの複雑な胸中……ワンコごときにわかってなるものか……!


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