飼い犬に手を噛まれまして


 なんとか今日という日を乗り切り、ロッカーで着替えを済ませてデザイン課を覗くと、煌々とした蛍光灯の下でまだまだ臨戦態勢の先輩たち。

 うわ、まだ当然のように仕事してる。

 郡司先輩も当然帰れないよね?


「あれ、茅野ちゃん。今、帰り?」

「あ……山咲さん! お疲れ様です。いつもお先にすみません」

「あはは、部署が違うんだから気使わないでよ。庶務課も忙しいんだろ?
 それに、シャープペンの芯がいつものに戻って郡司が喜んでたよ」

「本当ですか? よかったです」


 私でも、たまにはお役に立てることがある。


「嬉しそうな顔だな。付き合ってるんだって? 俺、何も知らないで無神経なこと言って悪かったな」

「あ……いえ、そんなことないです。私もすみませんでした」


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