飼い犬に手を噛まれまして

「なんで会社辞めちゃうのか、聞いてもいい?」


 和香は、ふっとため息をつきながら笑った。


「紅巴のせいだよ」


「え?」


「私、郡司先輩が大好きだったの。紅巴と先輩が、毎日毎日楽しそうに二人でいるの見せつけられて、我慢できると思う?

 いい加減にして、ってかんじ」


 なっ……な、な、な?


 あまりにストレートな物言いに、口をあんぐりと開いた。



 開いた口が閉まらないってかんじ?



 和香は、言ってやったとばかりに大根の煮物をほくほくと咀嚼してる。


「大根柔らかくて、美味しいー! 紅巴、食べないの?」


「え、うん。食べるけど……」



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