飼い犬に手を噛まれまして
「いらっしゃい」
仕事から帰ってきたばかりの先輩は、まだ着替えもしていないスーツ姿。
「お疲れのとこ、突然すみません。お泊まりする予定で来ちゃいました」
「体調大丈夫なのか? それなのに癒やしのサービス出張しに来てくれたんだ」
「えーっ? それ水商売みたいな言い方しないでくださいよ。先輩って年上なのに頭の中そういうことで溢れてますよね」
「だって、茅野がお泊まりとか言うからだろ! で、体調は?」
先輩の、だって、可愛い。
「体調は大丈夫ですよ。ご迷惑おかけしました。お酒は当分控えます。社会人失格ですよね」
「ならよかった。たまには酒も必要だろ、何か嫌なことがあったわけじゃないよな?」
嫌なこと…………先輩は私があの場にいたことを知らない。廊下で優しく抱きしめられてキス。
「先輩、好きです」
「今ので、すげぇ癒された」
「あはは、よかったです」