飼い犬に手を噛まれまして


─────「はああぁ? あのね、いくら紅巴が鈍感女だからって、その言葉は私が許さないわよ!

 先輩が好きだし別れたくないけど、ワンコも心配だから一人にできないって?

 はああぁ? ざけんじゃないよ」


「と、朋菜……?」


 朋菜の拳がテーブルに振り下ろされると、この店の日替わりランチがガシャンと音をたてて宙に浮いた。


「朋菜、落ち着いて! ここ、お店だし!」


「落ち着いてなんかいられないっての! 紅巴! 先輩か、ワンコ。今すぐ
どっちの男にするのか選びなさい!」



「え、選ぶ? 先輩は彼氏だし、ワンコは同居人として心配なだけだし……」


 日替わりランチが再び宙に浮く。


「選ぶの! あのね、紅巴。ワンコからは告白されたと思いなさい。

 あの素敵なイケメン郡司先輩と付き合うか、可愛い年下ワンコと付き合うか、今すぐ決めな!」


「だから、ワンコは私と付き合いたくなんて……」


「付き合いたいのっ! ワンコは、紅巴と付き合いたいのっ! なんでわかんないわけぇ?」




< 223 / 488 >

この作品をシェア

pagetop