飼い犬に手を噛まれまして
─────「はああぁ? あのね、いくら紅巴が鈍感女だからって、その言葉は私が許さないわよ!
先輩が好きだし別れたくないけど、ワンコも心配だから一人にできないって?
はああぁ? ざけんじゃないよ」
「と、朋菜……?」
朋菜の拳がテーブルに振り下ろされると、この店の日替わりランチがガシャンと音をたてて宙に浮いた。
「朋菜、落ち着いて! ここ、お店だし!」
「落ち着いてなんかいられないっての! 紅巴! 先輩か、ワンコ。今すぐ
どっちの男にするのか選びなさい!」
「え、選ぶ? 先輩は彼氏だし、ワンコは同居人として心配なだけだし……」
日替わりランチが再び宙に浮く。
「選ぶの! あのね、紅巴。ワンコからは告白されたと思いなさい。
あの素敵なイケメン郡司先輩と付き合うか、可愛い年下ワンコと付き合うか、今すぐ決めな!」
「だから、ワンコは私と付き合いたくなんて……」
「付き合いたいのっ! ワンコは、紅巴と付き合いたいのっ! なんでわかんないわけぇ?」