飼い犬に手を噛まれまして
「あはは……そんなわけないじゃん、あのさ、朋菜にお願いがあるんだけど」
「何よ?」
朋菜がじろりと私を睨む。日替わりランチの唐揚げが床に転がる前にそれを口の中に押し込めた。
「あ、唐揚げ美味しい!」
「だから、何よ!」
「うん、ワンコの様子見て来てくれない? 私、今日も先輩の所に泊まるからさ。
前にワンコが家出しちゃった時なんて、バイト先の床に新聞紙敷いて寝てたっていうし心配で」
私が差し出した部屋の鍵を朋菜は渋々受け取った。
文句言いながらも、困った時は必ず助けてくれる朋菜に感謝の気持ちでいっぱいだ。
「顔合わせたくないってのが、ワンコを男として見てるって証拠じゃん。
紅巴、あの部屋どうするの?」
「先輩と……一緒に暮らそうかと思って」