飼い犬に手を噛まれまして


 コインパーキングに停まっていた黒いレクサスのハザードランプが二回点滅した。


「乗って」


 助手席を顎でしめされて、戸惑った。



 ど、ど……どうしよう……



 こんな高級車乗ったことがない。しかも運転席には、郡司先輩が乗るんですよね? ど、どうすれば?


 緊張のあまりに私が固まっていると、郡司先輩は「ああ、そうか」と一人で納得したような顔をして助手席のドアを自ら開いてくれた。


「……先輩っ?」 


「どうぞ」


 わ……私いつか罰が当たるかも! 萌子先輩の罰よりも、もっとずっとすごい罰が当たるかも!


 吸い込まれるように助手席に座った。先輩がドアを開いてくれたから、戸惑いながらも素直に座れた。



「ありがとうございます……」


「どういたしまして、閉めるぞ?」


「はい……」



< 23 / 488 >

この作品をシェア

pagetop