飼い犬に手を噛まれまして
うわ……夢みたいだ。私が郡司先輩の車の助手席に座ってるなんて……
「家は、どこ?」
「はい、環八沿いのマンションです。この道真っ直ぐです」
郡司先輩は、スムーズに車を発進させた。ちらりと見た横顔がたまらなくカッコいい。カッコよすぎる!
LEDのブルーライトで照らされたシンプルで近代的な車内も、先輩のイメージと合っている。
「マンション……てことは、一人暮らしか?」
「はい」
「ペット飼ってるって言ってたよな? ペットオッケーのマンションなんだ? 家賃高いだろ」
「ええ……まあ……」
ペットの話になって、急に手のひらに汗をかいてきた。ペットはペットでも、その犬は大学生の男の子なんです。なんて言ったら、せっかく先輩と少しだけお近づきになれたのに、軽蔑されちゃうだろう。