飼い犬に手を噛まれまして
「紅巴に心配かけたくないから、実家に帰るってさ。大学も卒業できたみたいだし、就職も決まったみたいだよ。バイトも辞めたみたい。
まさか、紅巴の会社に就職したりしてないよね?」
「ううん、それはない。この前、新人研修会あって私お手伝いしたから全員の顔見たけどワンコはいない……」
私が知ってたワンコの情報は、大学とバイト先くらいだ。
「連絡先とかも聞かなかったよ? いいよね。紅巴、先輩と同棲するんでしょ」
「うん……」
だから、これは本当の別れだ。
ワンコには、もう二度と会えないんだ。
「よし、じゃあ、この話おしまいにしよ?
タカシさーん! オーブンのチキンが焼けたから運んでー」