飼い犬に手を噛まれまして


 庶務課は、通年二人体制。事務職の女性社員は年に一回の人事異動で入れ替わる。ここ数年は、ずっと萌子先輩と二人でやってきた。

 着替えを済ませて、いつも通りの隣合わせの席に座った。


「あ、退職祝いの会も郡司くん呼びなさいよ。あんたは来なくていいけどね」


「えーっ? 萌子先輩、また飲み会開いてもらうつもりだったんですか?」


「当たり前でしょ! この前のアレは、結婚を祝う会なんだから、次は退職を祝う会やりなさい! 次は……」


「アハハハ! それ続行させなきゃいけないんですか?」


「しなさいよ!」



 郡司先輩たちみたいなデザイナー組は、専門職と呼ばれ異動はない。

 それとうちの会社には管理職と呼ばれる偉い人たちもいる。だけど、そこは私たちから見れば未知の世界だ。

 専門職を引退して、尚かつ輝かしい成績を残した人しか管理職にはなれない。



「あ! ほら、茅野。社員一斉メールで異動発表されてる!」


「はやいですね。お昼頃だと思ってましたよ」






< 252 / 488 >

この作品をシェア

pagetop