飼い犬に手を噛まれまして
庶務課は、通年二人体制。事務職の女性社員は年に一回の人事異動で入れ替わる。ここ数年は、ずっと萌子先輩と二人でやってきた。
着替えを済ませて、いつも通りの隣合わせの席に座った。
「あ、退職祝いの会も郡司くん呼びなさいよ。あんたは来なくていいけどね」
「えーっ? 萌子先輩、また飲み会開いてもらうつもりだったんですか?」
「当たり前でしょ! この前のアレは、結婚を祝う会なんだから、次は退職を祝う会やりなさい! 次は……」
「アハハハ! それ続行させなきゃいけないんですか?」
「しなさいよ!」
郡司先輩たちみたいなデザイナー組は、専門職と呼ばれ異動はない。
それとうちの会社には管理職と呼ばれる偉い人たちもいる。だけど、そこは私たちから見れば未知の世界だ。
専門職を引退して、尚かつ輝かしい成績を残した人しか管理職にはなれない。
「あ! ほら、茅野。社員一斉メールで異動発表されてる!」
「はやいですね。お昼頃だと思ってましたよ」