飼い犬に手を噛まれまして

 制作フロアーとはまるで違う高級感あるオフィス。通路は絨毯張りで、花が生けてある。

 何回かしか来たことないけど、やっぱりうちの会社って凄いなぁ。


「茅野さん、副社長の今後のご予定などはまだ決まっていないから突然外出されたりすることもないと思うわ。

 まずは、社内での会議やデスクワークがメインになるから安心して」


「あ、本当ですか。よかったです」


「ここが副社長室よ。ドアは二枚。まず控え室」



 さすが、副社長室。控え室があるんだ。小さなデスクにパソコンと電話がひかれている。


「で、奥が副社長室よ。ここでの私語は中にも響くから気をつけて」


 加賀谷さんが声を潜めたので、私は黙って頷いた。


 ドアを丁寧にノックする。


「どうぞ」と許可を得たので、扉を開く。


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