飼い犬に手を噛まれまして

 副社長は、椅子にゆったりと座り、肘掛けに頬杖つくと白い歯をみせてニッと笑った。



 後退りして、ドアに背中を打ちつける。



「わっ…………わわわわ…………」


「こら、茅野さん。副社長に失礼でしょ! 副社長申し訳ございません。明日には、もう少し教育をし直して参りますので」


「加賀谷さんだっけ?」


「はい」


「今日はもういいよ。ありがとう。


 あ、彼女は置いていって。僕の秘書だから、僕が色々と教えとく。それでいいだろ?」


 加賀谷さんは、渋々頷くと、「失礼いたします」と部屋を出た。


 扉が閉まって、二枚目の扉も閉まって、ようやくまばたきをした。


 何度まばたきしても、私の目の前でニコニコとしているのは……


「ワンコっ!?」



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