飼い犬に手を噛まれまして
「紅巴さん、お久しぶりです」
「やっぱりワンコ!」
髪を短く切ったワンコは、まだ馴染んでないスーツを着こなして、一目でブランド物とわかるブルーのネクタイを緩く結んでいる。
「会いたかったです」
ワンコは、頬杖をやめて広いオフィス内をあっという間に私の前まで移動した。
こんな場所だからか、あのワンコとは思えないくらい大人になっていて……でも可愛くて真っ直ぐな瞳はそのままで、私は動けなくなる。
「会いたかった……」
パリっとしたスーツの袖を腰に回されて、思考回路が停止する。
「紅巴さんは、もう会いたくかった?」