飼い犬に手を噛まれまして
「はあ……」
「紅巴、どうした? 盛大なため息だな? 副社長秘書は疲れるか?」
「はい……色々と」
二人で暮らしだしてから、先輩は仕事を家に持って帰ってくるようになった。残業をするならしてくれてもいいんだけど、先輩が「家でもできるから」と言うので私はその背中を眺めながら応援する役を引き受けた。
先輩の大きな背中が机に向かう後ろ姿が大好きだ。
ティシャツの上からでも、しっかりとした肩幅やくっきりと浮き出る肩甲骨がよくわかる。
休みの日の早朝は、ランニングして鍛えているから、無駄なものを一切削ぎ落とした綺麗な体をしている。
かっこいい人って、たまたまラッキーなことに親からいい遺伝子受け継いだだけかと思っていたけど……先輩を見てるとそれだけじゃないと思う。