飼い犬に手を噛まれまして


 せっかく送ってもらったのに、気の利いたお礼くらい言えたらよかったのに……はあ、全然だめだ。



「部屋の中も見てみたいな」


「へ、部屋の中?」


 先輩と視線が合う。


 綺麗な二重……なんて、見とれている場合じゃない!

 今、ひょっとすると先輩が爆弾発言をしたかもしれない。



「可愛い犬も会ってみたいし、茅野の部屋寄っちゃだめか?」



 これは確かに爆弾発言だ。あの郡司先輩が私の部屋に来る?


 先輩に捕らわれた視線をなんとか取り戻して、自分の部屋を見上げた。


 来てくれるなら、今すぐ来て欲しい。


 だけど……



 西側から二番目の部屋に煌々と灯る明かり。今朝あけてきたカーテンは、ぴっちりと閉じてある。


 ってことは……犬、ご在宅。



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