飼い犬に手を噛まれまして

「それで、副社長はどうなんだよ?」


「あはは……」

 やっぱ、その話題は逃げさせてくれないんですね。


「感じは良さそうな雰囲気だよな。
 でも、まだ一度しか顔合わせてないのに、可愛い顔して俺のこと試すような目つきしてたけど。若いからな」


 ワンコめ……、郡司先輩が私の彼氏って知ってるからだ。


「俺からの印象は、いい意味でアグレッシブだと思った。
 最近の若い奴はディフェンスのことばかり考える。それに比べて、副社長は上昇思考も強そうだし。あれは、間違いなく次期社長の器だよ」


「先輩、そんなに沢山ワン……じゃなくて副社長と話たんですか?」

「ワン……?」

「すみません、こっちの話です」

「そうか。副社長は就任直後すぐにうちの部署に来たよ。『ここが心臓部だから』って言ってくれて嬉しかった。お礼言っといてくれよ」

「はい」


「俺が言ってたことを伝えろよ。それくらい、親密な仲だって感づかせておけ。本当は紅巴は俺の女だから……って、ちゃんと言いたいけどな。仕事は仕事だから」


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