飼い犬に手を噛まれまして



「これから毎日紅巴が副社長と二人でいるのを見て、嫉妬しなきゃいけないんだと思うと、ぞっとするよ。紅巴、濡れやすいし」


「……大丈夫だから、あっ!」

 首筋から背中に、先輩の舌が降りていく。

 本気でぞっとするなら、そんな余裕ある言い方できないはずだ。

 先輩は、私が自分のこと好きなの知ってるくせに、もっともっとと求めてくる。

 いつもそうだ。私を試してる。


「ああっ! っ!」

「感度良すぎ。でも、イかしてやるよ」

「先輩だからですってばっ! 先輩だけです!」

 手すりにしがみつく手に力が入る。き、気持ちいい……先輩の指が私の全部を支配してくる……頭がフラフラしてきた。


「あっあっあっ! 私、先輩だけが大好きです!」

 だめ………こんな場所なのに、いく。

 酸欠になりそうなくらい大きな声を出して、自分の声に耳がキンキンと痛い。
 太ももに、ツーっと何かが伝い落ちる。



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