飼い犬に手を噛まれまして

「でもありがとう。安心した。
 俺は、その倍紅巴が好きだ」


 私にしか聞こえないような囁き声が狡い。

「先輩、エリナさんの気持ちがちょっとわかりました」

「エリナの? なんで」 

「だって、先輩がそうやって追い立てるからどんどん追い込まれちゃうんですよ」


 別れて追いかけてくれなくなったら、きっとすごく寂しくて不安になっちゃう。
 先輩は納得いかなそうに首をかしげると、また激しく私を追い立てる。


「もういい、此処から先は何も考えないで、好きなだけ喘いでいいから」


「うん。いっぱい気持ちよくして」




 嬉しい……なんて思っちゃう私は、もう重度の先輩依存者だ。





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