飼い犬に手を噛まれまして
BNJフェスティバル
─────「きゃっ、やめてよ!」
「だって……それ……」
まだ見慣れないスーツ姿のワンコが目の前に迫る。背中は天井までの高さの本棚にぶつかる。
短くなった髪型のせいだ。綺麗な顎のラインに、可愛いのかカッコいいのかわからない中性的な顔を彼は惜しみなくオープンにさせた。
細いけど、しっかりと男性的な指が私の唇に触れた。
「ワンコ! 怒るよ! やめてよ!」
親指が下唇に押し当てられる。
リップラインから丁寧に描いた口紅は、ワンコに一瞬で拭いとられて、格闘の末束ねた髪は無残に解かれる。