飼い犬に手を噛まれまして

 きゃー! 羨ましい! と歓声があがって、なんだか恥ずかしくなった。


「はいはい、いいわねー。でも、そうよね、副社長には他にお相手がいるみたいだし」


「えっ? 萌子先輩なにを知ってるんですか!?」


 私が身を乗り出すと、他の二人も興味津々と萌子先輩をみた。


「あら、有名な話じゃない。社長の息子さんと言えば、うちのライバル社のイーストエージェンシーの社長娘と付き合ってたって話……たしか、羽根み……あれ、なんて名前だったかな? 去年のBNJのCMフェスティバルで最優秀賞をとった女よ」


「深陽さん?」


「そうそう、羽根深陽! なんだ、茅野も知ってるんじゃない」


 全然知らなかった……深陽さんがライバル社の社長令嬢。

 だから、ワンコは家出していたんだ。

 親同士に反対された理由もわかる。


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