飼い犬に手を噛まれまして

────ピンポーン。

 部屋のチャイムがなった。


 平らなお皿にプルンとひっくり返したばかりのプッチンプリン。スプーンを片手に壁掛け時計を確認する。

 もう、夜の十時だ。こんな遅い時間に急かすように、またチャイムがなる。

────ピンポーン。ピンポーン。

 催促の二度連打のチャイム。

 こんな時間に、うちに来る人物は一人だけあてがある。高校生の時からの友達、朋菜(ともな)だ。間違いない。

 朋菜は半年前歯医者さんと結婚した。旦那さんは、十歳も年上で朋菜にベタ惚れだ。

 優しくて経済力のある旦那さんと結婚した朋菜は、それはそれは幸せいっぱいの結婚式を私に見せつけてくれた。

 それなのに、朋菜は結婚半年後から家出を繰り返している。問題は彼のお母さん。ことあるごとに、朋菜にネチネチと因縁をつけてくるらしい。


────ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。


 はあ、また同居中のお義母さんの悪口に付き合わされるのか。明日も仕事なのになぁ。

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