飼い犬に手を噛まれまして

秘書って辛いんです


─────「で、どうして紅巴の髪型が朝と違うんだよ?」

 給湯室でコーヒーをおとしていると、郡司先輩は私の髪を指先でからめ取り自分の唇につける。


「先輩っ! 誰かに見られたら……」


「いいだろ、別に。俺と紅巴が同棲してるのなんて会社中が知ってるよ。だから、毎晩のように……こんなことしてるのだって、皆勝手に想像してる」



 先輩の指が、ワイシャツの隙間から侵入してくる。



「ちょ! だめ、だめだめだめ!」


「ケチ」


「先輩って、なんでそんなにお盛んなんですか? 高校生みたい」


 もう! と怒りながら、カップを並べる。


「高校生か、うん。そうかもな。どこで何してもカメラに追いかけられたり、そういう心配のない恋愛。

 新鮮で、高校生並みに舞い上がってる俺。男ってそんなもんだろ?」



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