飼い犬に手を噛まれまして


──────ごくり……と固唾を飲み込む。



 な、なんで、こんなことになっちゃったんだろう?


 かなりの大失敗だ。



「紅巴、だ、大丈夫?」


「な、な、何が? 大丈夫だよ」



 対面に座るのは、お義母さんと喧嘩して家を飛び出してきた朋菜。

 朋菜は、長年の友達でずっと大切にしてきた。


 だけど、ごめん、朋菜。今だけは、余計なこと言う前に消えて! て気分。



「副社長、お疲れ様です。助かりましたよ、やっぱり一人人員が増えるだけで、全然違います。役員会で進言してくれませんか?」


「はい、でも俺にはまだあまり発言権ありませんから」



 正方形のテーブルを挟んで、左側の郡司先輩が右側のワンコにビールを注ぐ。


 ここは会社から近いステーキハウスだ。



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