飼い犬に手を噛まれまして


「そんなこと言われても、私にも事情が……」


 ややこしいんだけど、昨日までとちょっと違うんだよね。


「わかりました。大丈夫」


 ワンコは、一人納得したように、うんうん、と頷いた。


「彼氏さんがいるんですね? 大丈夫。察知したら、一晩ベランダで過ごします」


 それから何を思いついたのか、自分の荷物を漁り出した。


「見てください。寝袋です! 彼女に頼られる男になろうと思って、アウトドアデートをよくしたんですよ。結局、彼女のほうがテントはるが上手くて、「使えないわね」って言われちゃいましたけど……


 茅野さんの彼氏さんがいらっしゃいましたら、僕はベランダで気配消して夜をあかします」



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