飼い犬に手を噛まれまして
「乾杯……しましょうか? ねえ、副社長」
一番重い空気発してるのは、コイツだ!
「はい、じゃあ、乾杯」
四つのグラスがカチンと合わさる。
それぞれ別々の視線でグラスの中の飲み物をゴクリ。
「朋菜、タカシさんの夕飯は大丈夫なの?」
「うん、今日は医師会なんだ……帰り遅くなる」
「そ、そっか、歯医者さんも大変ですねー? 先輩」
先輩の薄い唇がジンジャエールをグラスから離れる。小さく頷くと、両手でグラスを弄びながら深く腰をかけて、俯いただけ。
いつもなら、会話も弾みそうなのに!
ワンコの重い空気が先輩に乗り移った?
「せ、先輩?」