飼い犬に手を噛まれまして


「紅巴、不思議なんだけど……朋菜ちゃんと、副社長は初対面じゃないのか? さっきから一度も紹介しない」


 ギクーッ! とか、してませんから!

 
「ですよね? そうですよね? 副社長、私の友達の朋菜です。朋菜、うちの会社の副社長です」


 朋菜は愛想笑い浮かべると、「どうもー」と手をひらひらと振った。




 それなのに、ワンコはビールを飲み干してグラスをテーブルに置く。



「知ってますよ。何回も会ってるし、髪切ってもらいましたし。何を言ってるんですか、紅巴さん」




 ワンコーっ!



 そこは空気読もうよ!



 この状況からみて、私は彼氏の郡司先輩にワンコと同居してたこと言えてないのわかるよねーっ?


 先輩は、真顔で私を睨みつけてきた。


 はい、言わなかった私が悪いんです……



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