飼い犬に手を噛まれまして


「紅巴さん、自分の彼氏に最近まで俺と同棲してたこと隠してたんですね。俺は、二人が付き合ってるの知ってたのに。なんでそんなことしたんでしょうね」


「同棲じゃなくて、ルームシェアでしょ! ただの同居じゃん!」


「あ、逆キレっていうんですよー、そういうの! でも、キスはしましたよねー? 紅巴さん」


「あのねー! それは……全部ワンコが無理矢理やったんでしょ!」




 ワンコの可愛い顔がこんなに憎たらしいなんて!

 あの雨の日、泣きながら私の部屋に転がりこんできたくせに……



「キスか…………」


「先輩、違います!」


「何が違うんだよ。キスしたんだろ? ワンコね、紅巴、俺と付き合う前にワンコ預かってるって言ってたもんな。ふーん、まさか男だっとは」


「先輩……」



「朋菜ちゃんも知っていたんだ?」



 朋菜は、素直に頷いた。それから心配そうな顔をして私を見た。



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