飼い犬に手を噛まれまして
「嘘……多分、今ワンコは色んな事に傷ついて自分を見失ってる」
「な? そんなわけないじゃないですか! 俺は紅巴さんが好きなんですよ! 昨日傷つけてすみません。一晩中泣いてたんでしょう。目が腫れてます」
あの雨の日、ワンコを拾ってから、私の頭の片隅にはいつもワンコがいるのは確かだ。心配もしているし、辛い想いはして欲しくないと思ってた。
ただ、この感情は郡司先輩に対する感情とは全く別物。友情? 同情? なのかな。
「紅巴さん、昨日のことは許してください。紅巴さんがいなくなったら、俺にはもう何もなくなるんです」
「……ワンコ」
「その呼び方やめません? 二人の時は星椰(せな)でいいですよ。仕事中はマズいけどね」