飼い犬に手を噛まれまして
……とは、言ったものの…………
クビだよね……?
どうして私がワンコと深陽さんを会わせてあげる役回りなんて引き受けちゃったんだろう。そんな事すれば、SKMの全社員を敵にするようなもの。
勤続、七年。真面目にこつこつと頑張ってきた。
そして、社内で一番エリートで素敵な先輩の彼女になれて、夢のような同棲生活までスタートさせたのも束の間。
全部、失うことになるなんて……
「あの、山咲さん。郡司先輩いらっしゃいますか?」
「うわ? 茅野ちゃん、どうしたの? 酷い顔してる!」
「え、あ、別に……大丈夫です」
ハンカチを口元にあてて、顔を半分隠す。
鏡みてきたしバレないと思ったんだけどな、山咲さん優しい人だから泣いて目が腫れてることに気がつかれたよ。
「本当? まさか姫がまた何か嘘ついた? 何か嫌なことあれば俺から言うよ」
「あはは、違いますよ。あ、そうだ! 山咲さん、和香と連絡とりあってるんですか?」
「まあ……ね」
「雑貨屋さんで働いてるんですよね。私も行ってみたいのに、和香教えてくれないんです」
「姫はプライド高いからな。多分、下働きの自分を見せたくないんだよ」
「あはは、さすが。和香のこと、詳しいんですね!」
「からかうなよ。困ったな……あ、郡司呼んでくるよ」
「はい、すみません。よろしくお願いします」