飼い犬に手を噛まれまして
制作フロアーの中でも一番小さな会議室。ホワイトボードが一つにテーブルと椅子が四脚置いてあるだけの会議室。
「紅巴、悪い話か?」
先輩の低い声が、すぐに壁に反射される。
「いえ……最初に謝らせてください。副社長……ワンコのこと内緒にしてごめんなさい。彼とは、一緒に暮らしてましたし、色んな事もありました」
頭を下げると、いいよ、と短い返事。
「俺も余裕なくて、悪かった」
「先輩が謝らないでください!」
「紅巴……」
先輩に抱き寄せられる。
「こんな事で、すぐに妬く奴だから紅巴言えなかったんだろ?」
先輩の香りと温もりで満たされていくことに喜ぶ私。先輩を好きになれて、本当によかった。