飼い犬に手を噛まれまして


 なんの計画もないけど、イーストエージェンシーの支社の場所だけ調べて、深陽さんを探してみようと思ってる。


 この会社にはもういられなくなるけど、それでもワンコと深陽さんを会わせてあげたい。


 あの二人がすれ違っちゃったのは、私にも責任があると思うし……



「紅巴、頼む、行くな。羽根深陽と副社長に何があったか知らないけど」


「先輩……ごめんなさい。でも、信じて。ワンコはスパイじゃないんです。会社とか、コンテストとか……そういうのは問題じゃないんです。二人は大学の時から付き合っていて、ワンコはただ深陽さんのことが本気で好きなだけで、引き離されて迷っています。それにすごく寂しいんですよ。私、一緒に住んでたから分かるんです。それを先輩にも理解してもらいたい」


 先輩なら、わかってくれる。


 もう隠し事はしたくない。



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