飼い犬に手を噛まれまして
「先輩の……ください」
「今から違う男と海外に行くくせに?」
「はい……だって、こんなことするのは絶対に先輩だけですから」
そっと手を伸ばして触れてみた。
「お願いします……」
「どうされたい?」
「先輩のことしか好きになれないように激しく優しく」
「激しくなんて……」
「っ!」
もうしっかりと体に馴染んだ先輩の一部分。私には先輩がいる。
覆い被さるように先輩に抱きしめられて、首に腕を回すと、その律動に体を預ける。
「っ、…………あ、あっ」
「声抑えろよ……会議室」
そうだった。会議室……
んんん、でも苦しい。気持ちいいのに、声があげられないって想像以上に辛い。
「待ってるから……副社長がうちを裏切らないで自分の恋愛成就させて、紅巴が満足して帰ってくるのを信じて待ってる」
「……はいっ」
「そしたら……紅巴…………」
先輩の動きが加速して、視界がぶれる。
「な……んですか?」
「なんでもない」
先輩は私の首に顔を埋めて、大切そうに抱きしめてくれた。