飼い犬に手を噛まれまして
────「朝なのに、暑っ!」
飛行機で七時間半。日本との時差は一時間。
私たちは、シンガポール、チャンギ国際空港に降り立った。入国審査を受けて、旅行カバンを転がしながら、タクシー乗り場を探す。
「紅巴さん、シンガポールはじめてですか?」
「はじめてだよ。ワンコは?」
「俺もです」
「あはは、じゃ、迷子にならないようにしないとね。ホテルも探さないといけないし、けっこう大変だよ?」
無事にタクシーをみつけて、エアコンのきいた車内に乗り込む。日本で着てた上着は旅行カバンの中に押し込んだ。
「プリーズ ゴートウ ラッフルズプレイス」
行き先を告げると、タクシーが走り出す。
「つ、通じたかなぁ?」
「さあ。それよりマーライオン見に行きたいです。紅巴さん」
「みはるさんに会ってからね!」