飼い犬に手を噛まれまして
十八階で降りたのは私たちだけだ。そのフロアーは全部がイーストエージェンシーのものでエレベーターホールがそのまま受付になっている。受付に並ぶのは二人の東洋人の女の子。お揃いの制服で不思議そうに私たちをみたい。
ワンコの背中を押す。
「荷物持っててあげるから、行って」
「はあ? 俺、一人ですか?」
「当たり前でしょ!」
ワンコは、ムッとした顔のまま受付嬢に要件を告げた。日本語は通じるみたい。
「支社長の……羽根深陽に会いたいんですけど」
「支社長でございますか。失礼ですがお名前は……?」
「坂元星椰です」
「かしこまりました。お待ちください」
やった! 第一関門突破! やっぱり此処にいるんだ!
ワンコは、高い受付の台に両手を置いたまま俯いた。
緊張してるのかな? 話かけないでくれオーラが漂ってる。