飼い犬に手を噛まれまして
大学生で夜は居酒屋でバイトをしているっていうワンコこと、坂元くん。
私は彼を飼うことに決めた。
家賃、光熱費はシェアしてくれるって言うし、普段は深夜までバイトで忙しいから私とは生活の時間帯が違うって言うし、何より可哀想であれ以上「出てけ」とは言えなかったんだ。
「でもさ、紅巴もやるよね……先輩とは、今朝も会社で会ったんでしょう?」
朋菜は高校生の時からの親友だ。だから、ワンコのことも先輩のことも、全て包み隠さずに話た。
というか、誰かに話したくてたまらなかったんだ。
「会ったけど、普通に挨拶しただけ。ねえ、朋菜どう思う?」
「そりゃ、可愛いって言われてキスされたなんて、好きだ付き合ってくれって言われたも同然だよ」
「やっぱり?」
朋菜の一言で浮かれる自分。
「でもさ、エリートだしイケメンだし、おまけにハーフでレクサスに乗ってるなんて……なんか胡散臭いよね。リアリティに欠けてる」
「やっぱり……?」
今度は落ち込んだ自分が痛い。