飼い犬に手を噛まれまして

 一方通行の会話は、マーライオンから吐き出されてる意味のない水みたいだなぁ……なんて思った。


「あの目の前の三つのビルみたいなホテルの上が展望台になってるんだって! 人気あるらしいよ、行ってみる? せっかくだからナイトサファリとか、水上船に乗ったり市内観光もしようよ」


「紅巴さん」

「なに? あ、ワンコお腹すいたんでしょ。機内食たべてなかったもん。レストランいっぱいあるみたいだし、何が食べたい?」

「レストランの前にホテルとらないと今夜野宿じゃないですか?」

「それもそうだねー! ワンコの寝袋持ってきてないし、この近くのホテル探してみようか? 高いかな? 地下鉄で少し離れた場所なら安いホテルもあるみたいだけど、治安はどうなんだろう……」

「同じ部屋にしてくださいね」

「う……うん」


 抵抗ないわけじゃないけど、ワンコを一人にできないし……ワンコの指がまた私の手に絡まる。

 私、何してるだろ? って、今更思った。



 

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